やりたいことが頻繁に変わって一度決めた物事をやり通せない、そんな悩みを抱えていませんか?
そんな悩みを解決する考え方にやり抜く力、通称「GRIT」というものがあります。
今回はそのGRITについて、
- GRITとは何か
- GRITが強いとどんな良いことがあるのか
- どうすれば身につけることができるのか
について解説していきたいと思います。
この記事は提唱者であるダックワース氏の著書『やり抜く力』をもとに書いています。
この記事を読めば、あなたが決心したことをやり抜き、成功する確率をグンと上げる方法が身に着くでしょう。
さっそく見ていきましょう!
やり抜く力GRITとは
まず、「GRIT」とは、ペンシルベニア大学心理学教授のアンジェラ・リー・ダックワース氏が提唱した理論で
- Guts 困難なことに立ち向かう度胸
- Resilience 絶望的状況でも立ち直る復元力
- Initiative 自ら目標を定めて取り組む自発性
- Tenacity 最後までやり遂げる執念
という4つの単語の頭文字から来ています。
そして、彼女いわくこのGRITが成功において非常に重要であるらしいのです。
やり抜く力GRITが強い人の特徴とメリット
ではそんなやり抜く力が強いことはどんな特徴やメリットがあるのでしょうか?
主に
- 学業成績が良く、高等教育に進学しやすい
- 効果的な練習を行うため、結果を出しやすい
- 過酷な環境下でも成功しやすい
- 人生への満足度が高い
という4つがアンジェラ氏の研究で明らかになっています。
それらについて解説していきます。
学業成績が良く、高等教育に進学しやすい
やり抜く力が強いと学業成績が良く高等教育に進学しやすいことが分かっています。
アメリカ人を対象にした二つの調査では、
- 大学を中退した人よりも、大学を卒業した人のほうがやり抜く力が強かった
- 大学を卒業したひとよりも、修士、博士、医学士、法学士など大学院の学位を取得した人のほうがやり抜く力が強かった
- GRITとIQの間に相関は見られなかった
ことが分かったのです。
つまり、頭の良さとは関係なく、やり抜く力が強ければ学業成績が良くなり、一つのことを極める可能性が高くなる可能性があるのです。
効果的な練習を行い結果を出す
また、やり抜く力の強さと、その人がもたらす成果には関係があることが分かっています。
ダックワース氏は2005年に、英単語のスペルの正確さを競う大会「スペリング・ビー」の決勝戦に参加した175名のGRITスコアと、決勝戦での結果の関係について調べました。
すると、
- GRITスコアの高さによって参加者の決勝戦での結果が予測できた
- IQとGRITスコアの間に相関関係は見られなかった
- GRITスコアが高い参加者は、成績に深く関わるけれど魅力的でない、「意図的な練習」を良く行っていた
ということがわかったのです。
つまり、やり抜く力が強いと効果的な練習を良く行うようになるため、より大きな結果を出すのです。
過酷な環境下でも成功しやすい
また、やり抜く力が強い人は過酷な環境下でも成功しやすいことが分かっています。
その根拠となるダックワース氏の研究について紹介します。
アメリカの陸軍士官学校、通称「ウエストポイント」では毎年、陸軍士官候補生が入学します。
ウエストポイントで士官候補生となるには
- 議員または大統領の推薦
- 高校・大学入試での成績
- リーダーとしての資質
- 体力測定の成績
が必要であり、受かるのはなんと約11人に1人のみという非常に狭き門です。
そんな入学さえ難しいウエストポイントですが、そこでは入学直後「ビースト」と呼ばれる基礎訓練が行われます。
「ビースト」では、一日14時間ほどの訓練を7週間にわたって行うという非常に過酷な訓練が行われるため、士官候補生の多くが「ビースト」中に陸軍士官学校をやめてしまいます。
ダックワース氏はそんな「ビースト」の前に士官候補生にGRITのテストを受けさせ、ビースト終了後にに脱落してしまった人と脱落しなかった人のGRITスコアを比べました。
すると、
- ビーストを耐え抜いた候補生のGRITスコアが総じて高かった
- 脱落してしまった人と脱落しなかった人の志願生時の成績に、ほとんど違いはなかった
ことが分かりました。
つまり、才能よりもやり抜く力の強さが、過酷な状況化下で成功するかどうかを決めている可能性があるのです。
逆に言えば、どれだけ才能があっても、やり抜く力が低ければ過酷な環境下では成功は難しいということになります。
人生への満足度が高い
やり抜く力が強い人は人生の満足度が高いことが分かっています。
研究では、やり抜く力と人生への満足度は正の比例関係があることが分かりました。
つまり、やり抜く力が強ければ強いほど、人生への満足度も高かったことが分かったのです。
他にも、やり抜く力が強い人ほど、ポジティブな感情が多くネガティブな感情が少ないなど、精神的にも健康であることが分かっています。
つまりやり抜く力が強ければ人生における満足度も増すのです。
やり抜く力GRITの身につけ方
そんな成功に欠かせないやり抜く力ですが、いったいどのようにしてこのGRITを身につけたり、伸ばしたりすることができるのでしょうか。
アンジェラ氏によると
- 興味を持ったことを掘り下げる
- 自分のスキルを上回る目標を設定してクリアすることを繰り返す
- 自分の目標が大きな目的と結びついていることを意識する
- 絶望的な状況でも希望を持つことを学ぶ
- やり抜く力の強い集団の一員となる
の5つが考えられるとしています。
それぞれについて詳しく解説していきます。
興味を持ったことを掘り下げる
やり抜く力を身につけるにはまず興味を持ったことを掘り下げていく必要があります。
興味を持った対象をとにかく楽しんで、さらに興味を深めていくことでやり抜く力が育まれていくと彼女は話します。
その道のスペシャリストになった人は、最初に興味をもったことを何度も繰り返し、さらに興味を深めていく経験をしていることが分かっているのです。
例えば、メジャーリーグで活躍したイチロー選手は、小学3年生から中学3年生になるまでの6年間、毎日バッティングセンターに通っていたといいます。
このように興味を持ったことを何度も繰り返し取り組むことで、さらに関心を深めることができ、それがやり抜く力を育むということなのです
自分のスキルを上回る目標を設定してクリアすることを繰り返す
やり抜く力を身につける2つ目の方法は、自分のスキルを上回る目標を設定してクリアすることを繰り返す、です。アンジェラ氏はそれ意図的な練習と呼び紹介しています。
意図的な練習とは
意図的な練習とはなんでしょうか?
認知心理学者エリクソンの研究によると、世界中のエキスパートたちの練習にはある共通点があることが分かりました。
アンジェラ氏はその練習を「意図的な練習」と名付け、3ステップに分けました。
1.ある一点に絞ってストレッチ目標を設定する
2.しっかり集中してストレッチ目標の達成を目指す
3.改善すべき点をできるようになるまで何度も繰り返し練習する。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
ある一点に絞ってストレッチ目標を設定する
ある一点に絞ってストレッチ目標を設定するとは、自分がいまだに克服できていない弱点に絞って、あえて厳しい目標を設定するということです。
例えば、100走を12秒5で走っている人は、12秒4を目指して走ることを目標に設定するなどが挙げられます。
しっかり集中してストレッチ目標の達成を目指す
しっかり集中してストレッチ目標の達成を目指すとは、自分の目標を達成するために、伸ばしたい部分を把握し、意識しながら練習するということです。
例えば、筋肉をつけたいなら、どのようなフォームでどこに効かせるのかをきちんと意識しながら、練習を行うことを意味します。
改善すべき点をできるようになるまで何度も繰り返し練習する。
改善すべき点をできるようになるまで何度も繰り返し練習するとは、できないと思っていたことが無意識にできるようになるまで繰り返すことを意味します。
例えば、野球で外角低めのボールが打てないときに、外角低めを打つためのフォームが意識せずにできるまで、素振りを繰り返すといったようなものです。
アンジェラ氏はこのような意図的な練習による、小さな弱点の克服の積み重ねが、やり抜く力を伸ばすというのです。
とはいえ、そんな練習は辛くて難しいですよね。
そこでダックワース氏は意図的な練習を習慣化することを薦めています。
つまり、毎日、同じ時間、同じ場所で「意図的な練習」を行うというものです。
彼女はその理由として、習慣化は実行力を上げることが科学的に証明されているからだとしています。
自分の目標が大きな目的と結びついていることを意識する
次にやり抜く力を身につけるのに必要なのは、自分の目標が大きな目的と結びついていることを意識するということです。
違う言葉でいうと、自分のやっていることが、他の人々と深くつながっており、彼らのためになることを意識するということです。
例えば、仕事でねじを作っているとして、そのねじがどういった用途で社会や人々の役に立っているかを意識するなどが挙げられます。
ダックワース氏の研究では、こうした利他的で大きな目的意識をもつ人は、やり抜く力も高かったことが分かっています。
たしかに自分が世界を救うヒーローだと思ったら、「やらなければ」という力がわいてきますよね。(笑)
絶望的な状況でも希望を持つことを学ぶ
やり抜く力を身につける方法4つ目は、「絶望的な状況でも希望を持つことを学ぶ」です。
具体的には、
- 楽観的に考える練習をすること
- 成長思考を持つ
ことが重要だといいます。
楽観的に考える練習をするとは、悲観的な心のつぶやきに気づいて、楽観的に解釈しなおす練習をするということです。
例えば、失敗したときに、「失敗したのは私に才能がないからだ」などと心の中でつぶやいているのに気づいたら、「これは成功するための糧なんだ」と解釈しなおすといったものです。
また成長思考を持つとは、例えば、今できないことは未来永劫できないというのではなく、訓練すればできるようになるという意識を持つことです。
ダックワース氏はこうした楽観的な考え方や成長思考を練習することによって、逆境に対し粘り強くなり、やり抜く力が伸びるというのです。
おそらく、自分の心のつぶやきを意識するのは最初は難しいと思います。なので、個人的には瞑想などをするといいんじゃないかなと思います。
やり抜く力の強い集団の一員となる
最後にやり抜く力を身につける方法として、やり抜く力の強い集団に所属することをあげています。
スタンフォード大学名誉教授のジェームズマーチによる、人の意思決定に関する面白い話があります。
彼が言うには、人は基本的にメリット・デメリットで意思決定するが、ある時、人はそうしたメリット・デメリットによってではなく、「自分はどういった人間であるか」というアイデンティティによって意思決定することがあるというのです。
つまり、やり抜く力の強い集団に所属すると、「やり抜く」ということが自分のアイデンティティとなります。そして人は、時にそうしたアイデンティティによって決断するため、やり抜く力が強くなるのです。
確かに周りの人が勉強してたり、図書館にいると不思議と勉強に集中できますよね。まあやらざるを得ないからかもしれないですけど。(笑)
まとめ
今回はやり抜く力GRITについて、GRITとは、強い人の特徴、身につけ方という3つについて解説させていただきました。
まずGRITとは
- Guts 困難なことに立ち向かう度胸
- Resilience 絶望的状況でも立ち直る復元力
- Initiative 自ら目標を定めて取り組む自発性
- Tenacity 最後までやり遂げる執念
という4つの頭文字を取った概念であり、ダックワース氏がいうには成功に必要となる要素だと述べました。
そして、やり抜く力が強い人の特徴・メリットとして
- 学業成績が良く、高等教育に進学しやすい
- 効果の高い練習に取り組むため、結果を出しやすい
- 過酷な環境下でも成功しやすい
- 人生の満足度が高い
を取り上げ、成功には才能よりも、やり抜く力が必要だという証拠や、やり抜く力が強いほど人生の満足度も高いということなどを説明しました。
最後に、やり抜く力の身につけ方として
- 興味を持ったことを掘り下げる
- 自分のスキルを上回る目標を設定してクリアすることを繰り返す
- 自分の目標が大きな目的と結びついていることを意識する
- 絶望的な状況でも希望を持つことを学ぶ
- やり抜く力の強い集団の一員となる
を学びました。
個人的には
- やり抜く力を身に付けるには、瞑想で自分の感情を把握する練習が必要
- 感情に左右されない習慣を身に付けることが大事なのではないか
と感じました。
今回参考にさせてもらったダックワース氏の著書「やり抜く力」は、才能をえこひいきする人間のバイアスや才能を神格化する人々といった、非常に興味深い話がたくさん載っています。
よければぜひご自分の手に取って、内容を確かめていただきたいです。
最後までご覧いただきありがとうございました。
参考文献
Duckworth, Angela & Peterson, Christopher & Matthews, Michael & Kelly, Dennis. (2007). Grit: Perseverance and Passion for Long-Term Goals. Journal of personality and social psychology. 92. 1087-101. 10.1037/0022-3514.92.6.1087.
Li J, Fang M, Wang W, Sun G, Cheng Z. The Influence of Grit on Life Satisfaction: Self-Esteem as a Mediator. Psychol Belg. 2018 Apr 27;58(1):51-66. doi: 10.5334/pb.400. PMID: 30479807; PMCID: PMC6194520.
アンジェラダックワース,神崎朗子(訳) (2016),『やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』,ダイヤモンド社, 376
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