経営をする際にどうした戦略を取ればいいのだろう。
そんな悩みをお持ちではありませんか。
今回はリチャード・P・ルメルト著『良い戦略、悪い戦略』を参考に、効果的な経営戦略に共通する条件について解説していきます。
この記事を読めば
- 効果的な戦略に必要不可欠な要素を知る
- 意味の無い戦略を見分ける
ことができます。
効果的な戦略を立てられるようになると、目標達成にも近づきますよ。
効果的な戦略に必要不可欠な要素
効果的な経営戦略を作る上で必要不可欠な要素とは何でしょうか
それは
- 現状の分析
- 分析に基づいた基本方針
- 方針に沿って組織された行動
の3つです。
これら3つの要素は、病気の治療に例えることができます。
例えば、お医者さんが病気を治療するときには、まず症状を診断します。
症状を診断することで、その病名を明らかにするのです。
これが、現状の分析にあたります。
そして明らかになった病気に対して治療法を決めます。
これが分析に基づいた基本方針です
最後に、実際に決定した治療法に従って治療を行なっていく、というのが方針に沿った行動です。
こうした3つの要素が効果的な戦略の基礎となるのです。
以下ではそれぞれの要素について詳しく説明していきます。
現状の分析
効果的な戦略を作る上では、現状の分析が必要不可欠です。
現状を適切に分析していれば、状況を整理して何が本当の問題なのかを明らかにすることができるのです。
現状の分析の重要性を示すスターバックスの例
戦略を立てる上での分析の重要性を示す、スターバックスの例があります。
スターバックスは今では街中でよく見るコーヒーショップですが、2008年には利益率が低下していました。
当時の経営幹部たちは、「顧客の期待にどう応えるかだ」、「新たな成長基盤を見つけるべきだ」など、この問題に対してさまざまな意見を出しました。
しかし、こうした分析は、どの案が正しいのか検証することができません。
つまり、スターバックスでは問題を明確に定義できていなかったのです。
そのため、どのような結果を目指し、どうした行動を取れば良いのかが分かっていませんでした。
このように、重要な問題点を明確にするには、現状の分析が不可欠なのです。
適切な分析は、するべき行動を含む
また、適切な分析がされると、その重大な課題に向けてどういう行動を取れば良いかが自然にわかるようになります。
例えば子供の学業成績は、クラスの人数や教育予算よりも、社会階層や家庭教育に左右されることが分かっています。
しかし、それが分かっても政策としては何もできませんよね。
ここで、子どもの学業成績の一部が、学校の組織構造によって説明できるという事実があることがわかったとします。
これなら、政策として組織構造の改革を行うことができそうです。
このように、現状が適切に分析されれば、そこには取るべき行動も含まれているのです。
まとめ
- 重要な問題点を見つけるために現状の分析をする
- 適切な現状の分析は、問題に対して取るべき行動が含まれている
分析に基づいた基本方針
分析をした後は、基本方針を固めていくことが必要です。
基本方針では分析によって明らかになった課題をどのように乗り越えるか、また、何をしないかといった行動の方向性を決めます。
ここで注意しなければならないのは、基本方針と、ビジョンや目標は別ものだということです。
例えば、富士フイルムはビジョンとして
「オープン、フェア、クリアな企業風土と先進・独自の技術の下、勇気ある挑戦により、新たな商品を開発し、新たな価値を創造するリーディングカンパニーであり続ける。」
ということを掲げています。
このようにビジョンは企業の持つ願望を表したもので、そこに具体的な戦略や方針は含まれていません。
基本方針は、どのような課題をどうやって乗り越えるかという行動の指針を明らかにします。
基本方針は行動に一貫性を持たせることができる
また基本方針を設定すると自分の持つ強みに行動を一貫させることができるようになります。
ステファニーさんの例
例えば、『良い戦略、悪い戦略』の著者ルメルト氏の友人であるステファニーさんは、食品店のオーナーをしていました。
ステファニーさんは、「これからも安値で売り続けるべきか」、「アジア人学生のためにアジアの食品を売るべきか」、「レジを増やすべきか」など、多くのことに悩んでいたのです。
ここでルメルト氏が現状を分析して問題点を洗い出すように促すと、彼女は地元のスーパーとの競合が問題だとしました。
そのスーパーは年中無休で、値段も安いというのです。
そして彼女は、そんな大手スーパーからどうやって客を奪うのかが問題だということに気づきます。
彼女によると、彼女の店の常連客の多くは、地元の大学生か地元で働くサラリーマンだというのです。
さらに学生は値段重視、会社員は時間重視であることや、スーパよりも短時間で買い物ができる点が好まれていることもわかりました。
ステファニーの店 | スーパー | |
強み | スーパーより買い物に時間がかからない | 年中無休 |
値段 | 普通 | 安い |
地元の大学生 | 地元で働くサラリーマン | |
重視すること | 値段 | 時間 |
経済力 | お金がない | お金がある |
このように状況を整理すると、明確な選択肢が出てきます。
それは、学生を重視するかサラリーマンを重視するかということです。
もちろん両方のニーズに合った戦略が取れるのが一番です。
しかし、今回は2つの客層が大きく異なっていたためそうはできません。
そのためステファニーさんは、より多くのお金を使ってくれるサラリーマンを重視した戦略をとることにしました。
そして、基本方針として「忙しく働く人のニーズに応える」ということを選んだのです。
彼女は、基本方針を決めたことで、仕事終わりの時間帯の混雑に対応するために2台目のレジを導入したり、お菓子の棚を減らして、高級惣菜コーナーを作ったりしました。
このように基本方針を設定することで、その後の行動を決めることができ、自分の持つリソースをその目標に集中させることができるようになるのです。
方針に沿って組織された行動
効果的な戦略では基本方針を実行に移していかなければなりません。
課題を乗り越えるには、具体的に解決に向けた行動を起こす必要があるのです。
優先順位の決定
そして行動する際には優先順位を決定することが必要です。
この優先順位を決める段階が、戦略の中で最も重要で最も難しいものになります。
なぜなら、矛盾しあう考えや対立しあう価値観をどちらかに決める必要があり
そうした決断をするということは、優秀な人材や今までやってきたことを失う可能性もあるからです。
例えば、全国展開している店で、コストの重大な問題から、戦略として地域ごとに同じ商品を売ろうと考えているとしましょう。
しかし、地域ごとの優秀な開発担当者は、現地の好みに合わせた商品を売るべきだと考えています。
このとき、あなたはこの開発担当者がやめてしまおうが、戦略を優先する決断をしなければならないのです。
このようにできれば避けたい決断をし、重要なところに集中するのが効果のある戦略の極意なのです。
強みへのリソースの集中
また行動を行う際には、課題解決に向けてリソースを集中させる必要があります。
組織内のリソースや行動を課題解決に一貫させることによってより大きな効果を得るためです。
一貫していない行動は、互いに衝突しあったり、課題解決の焦点から外れてしまうのです。
例えば、フォード社ではボルボ・ジャガー・ランドローバー・アストンマーティンなど名だたる車会社を買収していきました。
そして、ボルボとジャガーの設計を一つにまとめてしまったのです。
つまり、ボルボの安全さや、ジャガーのスポーティさを組み合わせてしまい、それぞれの魅力を薄めさせてしまったのです。
このように一貫しない行動は、互いに矛盾を生んで衝突しあうことで、戦略の効果を弱めてしまうのです。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は効果的な戦略に必要な要素について解説しました。
それらは
- 現状の分析
- 分析に基づいた基本方針
- 方針に沿って組織された行動
という3つであり、
適切な現状の分析をすることで
- 重要な問題点を見つけられる
- 問題に対して取るべき行動が分かる
ようになります。
その後、そうした分析に基づいて明らかになった課題に対して
どのような行動を取るかという基本方針を立てることによって自分の持つ強みに行動を一貫させることができるようになります。
そうした基本方針を行動に移していくときは、それらの行動が矛盾して衝突しあわないように、優先順位を決定し、リソースを自分の強みへ集中させていく必要があります。
以上をまとめると効果的な戦略とは、重要な課題を見つけ出し、その課題解決に向けて自分の持ちうるリソースをすべて集中させた行動をとることだと言えます。
今回参考にした『良い戦略、悪い戦略』では、実際にどのようにして強みを発見していくのか、また、生み出していくのかなどが分かりやすく紹介されています。
気になった方はぜひ一読ください。
参考文献
リチャード・P・ルメルト (著), 村井章子 (翻訳), 『良い戦略、悪い戦略』,日経BP
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